水沼メイの意外な素顔

3/4
前へ
/63ページ
次へ
 水沼は自分の注文したドリアが席に届いても、暫く大雅を見つめていた。 「料理が来ましたよ。食べながら、ゆっくり話しましょうか?」  優しい声色で語りかけると、水沼は「いいなあ、永禮(ながれ)くんは。そんなにカッコよくて優しいなんて」と寂しそうに笑う。 「僕、別に優しくはないですけど……こんな風に水沼さんと会えたのも何かの縁ですし、話をすることで少しは気が紛れればって思ったんです」  大雅は言いながらハンバーグにナイフを入れる。  水沼はバッグの中からハンカチを出して、目に溜まった涙を目頭からそっと拭いていた。 「あのね、学生時代から知ってたゼミのOBの人に、1年前に告白されたの。私はずっと付き合ってるつもりだったんだけど、全然会ってくれなくて。いい年なのに将来の話もはぐらかされちゃうし……もう期待するのは止めようかなって思うようになってたんだよね」 「……そうなんですか。部外者なんで無責任なことは言えませんが、メイさんが幸せじゃないのなら、そのお付き合いは良くないと思いますよ」  ーーいや、これは踏み込みすぎか。槇田さんとの繋がりをもっと聞いた方が良さそうだな。  水沼は小さくうなずいている。  大雅はハンバーグを口に入れて咀嚼し、心配そうな顔を浮かべた。 「あの、彼氏さんって、どんな人なんですか?」 「ああ、うん……ええと……1人で仕事してて、すごくデキる人なの。いつも仕事ばっかりになっちゃうのは仕方ないか、って思ってたんだけどね」 「もしかして、他の女性の影でも……?」 「うーん……」  そこで水沼は黙ってしまった。大雅の魅了が効いていても、槇田の話を渋っている。  これ以上は踏み込めないかもしれない。あまり強く惹かれさせてしまうと、水沼の人生を変えてしまう。 「多分、だけどね……。利用されてるの」  水沼の告白に、ドクン、と大雅の心臓が跳ねた。  ーーリヨウサレテルノ。  頭が真っ白になっていく。  利用、つまり……。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

97人が本棚に入れています
本棚に追加