使えない助手

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(カツラ)、水沼さんが槇田のことを話してくれたんだ」 「……え?」  一体何が、どうして、と戸惑っていると、水沼メイはふわりと笑う。 「槇田浩介は、私が会社の経営企画にいるって知って、近づいてきたんだと思う。プライベートで仕事の話をよく聞いてくるなと思ってたんだけど、私から聞いた話を元に、うちの会社に営業かけて来てたんだろうなって今ならわかる。結城室長に今回の調査を聞いたとき、びっくりしちゃったんだ。あの人、そこまでうちの会社に入り込んでたんだ、って」 「……そうだったんですね」 「ほら、先輩とかOBって、仕事の話をしやすいっていうか、そういうのもあってね。てっきり、私は浩介のいい理解者だって思ってたんだけど……」 「槇田さんが本当に目的を持って水沼さんに近づいて来ていたとしたら、水沼さんはどうされるんですか?」 「ん。もう確信に変わったかな。結構前に『海外進出の予定とかないの? 英語勉強しない?』とか聞いて来たことがあったんだ。あの時、私は部署が違うから大丈夫だけど英語の勉強を社内で進めるために何かしなくちゃ、とか言っちゃったの」  はあーと水沼は大きなため息をついた。 「正直に結城さんに言うことにする。守秘義務の範囲でしか話はしていないけど、色々聞かれちゃったのは確かだから。今回の件で浩介が採用されようがされまいが、私の話を聞いて判断をしてもらいたいなと思う。あと、ゼミの先輩やOBとOGが浩介のことをよく知ってるから、仕事関係も含めて身辺調査にはバッチリ協力できちゃうし」  どこか吹っ切れたようにも見える水沼が「へへ」と笑う。目尻に浮かぶ涙が控えめに光っていた。
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