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恭祐が車を停めたのは御徒町の月極駐車場で、ビルの地下だった。大雅が何気なく駐車場の値段を尋ねると、この辺りの月極は大抵4万円が相場だと聞かされて絶句する。
「都会で車を持つのって大変なんですね」
「この辺は都会というより下町だが、観光地で人も多いから地価も高い。車を持たなくても公共交通機関を使えば不自由はないからな」
恭祐はサングラス越しにジロリと大雅を見た。
「それにしても、本当に芸術品のような見た目だな。元モデルって言ったか?」
「……はい。その前には本名でアイドル活動もしていました」
「キャーキャー言われていたわけか」
「そりゃまあ……」
恭祐は大きなため息をつきながら、ビルの日陰に入ったところでサングラスを外して胸ポケットに差す。
大雅は「それ、度入りですよね?」と声を掛けた。
「目が太陽光に弱く、視力も良くない」
「もしかして、さっき言っていた『体質』ですか?」
「そうだ」
大雅が横から恭祐の目を見ると、茶色い目が角度の関係か金色に光っているように見える。
「所長は、女性に言い寄られたりしないんですか?」
「……しない」
「愛車がBMWでも?」
「そもそも、女を助手席に乗せない」
「へえ」
乗せない、とは明確な意志を持ってのことだろうか。恭祐の言い方に引っかかる。
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