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末裔が人並みに家族を作って子孫を残していかなければ、現代に末裔は存在しない。
そんなことを考えて、大雅はがっくりと肩を落とした。
母親の親戚しか知らないが、桂男の血を引くのが顔も知らない父親だとしたら。
違う。自殺を考えた自分を思いだせ、と大雅は恭祐に会った日を頭に浮かべる。同じように生きづらい思いをしている末裔だっているかもしれない。
「まあ、これで俺が桂をスカウトした理由が分かっただろ?」
「理由? 僕が末裔だからですか?」
恭祐は席について「いただきます」と手を合わせると早速食事を始めた。
「不忍探偵事務所は、不忍奇譚に出てくるような混血の英雄たちが、堂々と働ける場所にしたい」
「混血の英雄……。物語には英雄が出てくるんですか?」
「今度、うちの蔵で見せてやるよ。っつっても、言葉がちょっと難しくて読みづらいけどな」
頭に生えた耳を動かしながらガツガツと食事を進める恭祐を見ながら、「それでも、気になります」と大雅も食事を始める。
「桂、料理うまいな。どれもイケる!」
「失敗しない料理しか作ってませんけど」
「うまいもんはうまい。おかわりは?」
「え? その見た目で『お手』とかするんですか?」
「そっちのおかわりじゃねえし!」
怒った恭祐の顔は普段より険しく、敵を威嚇する動物のようだ。
「怒りすぎじゃないですか?」
冷静に返すと、恭祐はピンと立っていた両耳をペタンと折り、「この姿の時は食事に対する執着が増す気がする」と言ってしゅんとした。
そんな恭祐を動物っぽいな、と思いながら「おかわりならありますよ」と声をかける。
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