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出会いが印象深いとはいえ、あまり関わったことない女子に、こんな誘い出来る時点で、本当に人付き合いが苦手なのだろうかと思ったけど──好きな男子と定期的に二人きりで話せる機会を断る理由はない。 「全然いいよ、その、わたしも──三秋くんとお話したいって思ってたから・・・・」  それを聞いて三秋くんはまた、はあーっと息を吐き出して肩の力を抜いた。 「いや、良かった。女子に突然こんな誘いしようとするのは勇気いるね」  どうやら、実際は相当緊張していたらしい。隠す技術が高すぎて、普段、三秋くんをよく観察してるわたしでも分からない時がある。  でも、普段は誰にも見せない秘密の顔を見せてくれてることに、特別感があって胸の中の温度が上がる。  時計を見るともうすぐバスの時間だった。 「三秋くん、ごめん、バスが来るから今日はこれで」 「もう、そんな時間か、じゃあ僕も帰ろうかな、またねあかりさん」  そう言って、わたしたちは図書館の入り口で別れてから、わたしはバスに乗り込んだ。  ──自室のベットに横になってスマホをつける。  友達リストの三秋くんのアイコンをタップしてメッセージを送ろうか、送ってもいいのか迷っていると、スマホから通知音が鳴りメッセージが表示された。  三秋 『今日は、ありがとう!』  あかり 『うん、わたしも意外な一面が見れて凄く楽しかった』  三秋 『あ、皆には内緒にして欲しい』  あかり 『大丈夫だよ、言うような友達いないし・・・・ひかりにも内緒にしとく』  三秋 『なら、いいんだけどあかりさん・・・・いや明日また会って言おうかな』
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