1/12
前へ
/219ページ
次へ

宴の席は極彩色の絹を張った大天幕内に設けられていた。中は涼しく、柱にまで金が被せてあり瞼を細めるほどに眩い。宮殿の装飾を引き継いだような趣だ。 数十人が座れるほどの広さがあり、奥には金銀に宝石で彩られた玉座があった。 王以外の者達は床に敷いた絨毯の上に縦三列で直に座る。絹織物を被せた美麗なクッションが置かれ、皆寛いだ雰囲気で談笑していた。 凝乳で満たした皿の上にレモンの漬物、塩水に漬けた胡椒、酢漬けのマンゴーを載せたものがテーブルの上に置かれた。甘味を溶かした水や酒で杯も満たされる。 後は王が現れるのを待つだけだ。黄金の煌めきを借りながらもモルテザの表情は暗かった。早く時が過ぎてくれと願った。道化の衣装も仮面も脱ぎ捨て、ただのモルテザに戻りたかった。
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加