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東西の市場の間には川が流れ、商品を売ったり運搬する舟が往来していた。 「なんのためにここへ?」 「春祭の闘技会に出るためだ」 「ひょっとしてそのターコイズって……まさか勇者? 六つも……凄い。本物なのね」 素直な讃嘆にモルテザはニヤリと笑みを返した。西の市場に続く橋を渡り、生地や衣類を扱う店の間を進む。広大な市場が品物の種別によって分けられ整備されているという発見があった。肌の黒いの白いの、蜂蜜色の者、髪の赤いの黒いの茶色いの、市場で品定めをする者達の風貌の何と種々雑多なことか。民族の多様性を反映した品々は東方西方、シェナやミンディア、キリスといった一生その地を踏むことがないであろう遠国から、海上、絹の道を通って運ばれてきたのだろう。
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