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「これ、いいんじゃない?」
派手な紫の生地をラーメシュが店の軒から引き抜いてモルテザの肩にあてがう。
「いいって。俺はこんな派手なのは趣味じゃない」
色も鮮やかだが長方形の布の両端にはフリンジが付いていた。
「頭に巻いたり腕に巻いたり、腰に巻いても格好いいわよ」
「道化か男娼か?」
「やだ! ここでは普通! 周りを見て! みんな着飾ってる。明日は祭りよ。王様の前で戦うんだから衣装でも負けないようにしないと。あんた地味過ぎるわ。それに着替えも必要よ」
ラーメシュに圧されて辺りに目を遣れば、赤にブルーに緑に黄色、金銀の色彩が踊っていた。香油を扱う店も軒を連ねているとはいえ、竜涎香に麝香、薔薇の香りは民衆の肌から漂ってくる。綺羅びやかな衣装の乙女達が嫋やかな手付きで売るのは輝く宝石だ。
「あれは、あの者達は?」
乙女達の容姿は一様に美しく興味をそそられた。
「美しいけど奴隷達よ」
籠の中の真珠の目映さがモルテザの瞳に突き刺さり眉を顰める。
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