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やがて輿は謁見の間の前で止まった。輿から降りると扉が左右に開かれる。王の威光を物語る綺羅きらしい装飾は無論のこと、同時に荘厳な重々しい空気が流れていた。 白檀に金と宝石が眩い玉座まで極彩色の絨毯が敷かれ、左右には高官達と警護する兵が並んでいた。それらの者達に促され前に進むも、玉座に人の影はなかった。膝を付いて王が現れるのを待つ。 「王が参られます」 やがて先触れと共に宦官と小姓を引き連れ王が姿を現した。とは言っても頭を下げているので顔は拝めず、上から降ってくる声を待つしかない。 「この方こそアルフィーと異名を持つ初代カラウーン王が築いたサリシャ朝、第二代シーラス王、第三代サイラス王──アンラの災厄を経て──第十代ムスターシム王が弟のフダーバンデフに誅されるも、その息子カーズガーンに倒され、第十一代として立ったカーズガーン王の皇子にして、砂漠の獅子の紋章の正統なる継承者、英知英邁なる第十二代シャフリヤール王でございます」 宦官が長い王朝の来歴とシャフリヤール王の偉大さを暗唱する。
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