2.天使のチュートリアル

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2.天使のチュートリアル

『ここ、エデンZ(ゼータ)学園は、20XX年の地殻変動カタストロフを奇跡的に逃れた最期の楽園。だが食料が不足しており、学園は未来を担うべき者の選別を行なった。心清らかで健全なる乙女よ、あなたはイヴに選ばれた。共に未来をつくるアダムを選びなさい』  目を開けると、アルビノの天使が浮いていた。 「あなたも攻略対象?」  興味本位で聞いた私を、天使は不快そうに睨む。 「わきまえなさい。私は天使・チュートリ。ゲームを超えた存在です」 「それで一人だけ解像度がいいのね。残念」  ため息をつく私に、天使は呆れ顔で言う。 「呑気ですね。 母親の情夫に殺され、ゲームの世界に転生したと言うのにーー」  殺害されたという衝撃の事実を、私は驚くほどアッサリと受け入れた。  昔から、母のコブである私を目の敵にする男は多かったし、こんな人生早くおりたいと、ずっと思っていたから。  それより、『乙女ゲー転生』ですって?  プレイヤーじゃなくて、ゲームキャラになっちゃったってこと?  私は息を飲む。  七歳の誕生日、なんの気まぐれか母が、古いスマホに乙女ゲーをダウンロードしてくれた。それは恋に奔放な母の、一種の弁明だったのかもしれない。  けれどそれ以来、人間不信な私は乙女ゲーに救われてきた。  そこは私が愛を得られる唯一の場所だった。  ここに骨を埋められるなら、本望かもーー  思わぬボーナスステージに感謝しつつ、天使の説明を聞く。 「このシーンはエンディング前最後の分岐点。どちらの殿方と添い遂げるか見極めてください。選択肢を選ぶ前であれば、自由に会話できますので」  (待って、前言撤回)  『どちらか』ーー?
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