4.究極の選択

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4.究極の選択

「どうしたんだ? 咲希」 「灰岡さん? 大丈夫ですか?」  急に黙り込んだ私を心配する二人に、心が痛む。  私には彼らに愛される資格がないーー。  でもだからって、ゲームの中でまで、誰にも愛されずに死ぬのは嫌……。  欲張らなければ、許される?  どちらか一方だけなら、自分を偽って添い遂げられるかも知れない。  でも……そこに本当の愛はあるのーー?  呼吸が浅くなり、私は床に崩れ落ちた。 「咲希!」 「灰岡さん!」  駆け寄った二人に「大丈夫」と笑おうとするが口角が上がらない。  だめ、私には決められない……。  彼らに選択肢を委ねよう。  素で接して、それでも私を好いてくれた方について行こう。 「ごめんね、私、自信がなくて……」  探り探り、私は心のうちを漏らす。 「心配で当たり前ですよ、こんな先行き見えない状況では」  先生は安心させるように、私の手をぎゅっと握った。  会長は「お前は俺の横にいればいいんだよ。後のことは俺とABPに任せとけ」と、私の頭を優しくなでた。   (ちょっと待って?)  会長のセリフに聞きなれない単語が混ざっていたようなーー 「AD……なんて?」 「『ABP』、『Artificial Breeding Program(人工繁殖計画だ)』。人工交配させた(アダム)お前(イヴ)の遺伝子を人工子宮で育て、効率的に新たな人類を生み出すシステムだ」  得意げに説明する会長。  り……理解できないーー  頭の中で警告音が鳴り響く。 「わ……私は会長と一緒にいられるだけで、幸せなのですが……」 「何を言ってるんだ! 人類の種を残すことこそが! 俺たちに課せられた使命だろう?」  会長は、必死に訴える私の肩を乱暴に掴み、怒鳴りつける。
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