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7 テスト
担任が言った。
「じゃあ明日は、おまちかね国語のテストだからな」
騒ぐ生徒たち。
「やだなあ」
「あーあ」
「ちぇーっ。ちぇーっ」
がんちゃんとヒロシと小野は下校する。
「どうしたの、がんちゃん」
とヒロシ。
「様子が変だよ、がんちゃん」
と小野。
「お、お、お」怯えているようながんちゃん。「おれ、て、テストと聞いただけで、全身が震え、あぶら汗が出て、心臓がドッキドキになるんだ」
「ああ。明日のテストか」
「出たとこ勝負だよ」
「お、お、おまえら」
がんちゃんは顔面蒼白。まるで悪霊に取り憑かれているがの如くおののきまくっている。
「よくも平気でいられるな。おれもうダメ。死にそう。あ。ああ。テスト嫌だあ。て、テストごめんだあ」
「とって食われるわけじゃないし。大丈夫だよ。がんちゃん」
「そうだよ。全力でぶち当たればいいだけだよ。がんちゃん」
わなわな瘧に罹ったようながんちゃん。
「あ、明日までにーーだ、大地震でも、来ないかなあ」
翌日。
教室に担任がやって来た。
(つ、ついにーーじ、地獄がーー)
怖じ気づくがんちゃん。
担任は言った。
「あー。おまえたち。昨日言っていた国語のテストなあ、中止だ。先生のミスで、まだやっていない分まで問題を載せてしまったんだ」
「え。中止?」
一瞬停止したあと、ぱあっとがんちゃんの表情は華やいだ。晴れやかになる。浮き立つ声音。
「ちゅ、中止。中止って聞こえたけど。おれの聞き間違いじゃないだろうな」
左右に座るヒロシと小野に確認する。
「中止か。テスト」
「うん。中止」
「中止って言ったか。テスト」
「そう。中止」
「やったあああ!」がんちゃんは狂喜乱舞。「中止、中止、テストは中止。ああめでたい。ああ生きている実感。よかったよかった、よかったよお」
「あー岩田」
「はいなんでしょうか先生様」
「喜んでいるところに水を差して悪いが」
担任は告げた。
「代わりに算数のテストだ」
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