13人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
1 ばか
休み時間の教室。
がんちゃんは、ヒロシと小野に言った。
「おまえら、ぶんじ、って知ってるか」
ヒロシが聞き返す。
「ぶんじ?」
「そう」
小野が首をひねる。
「ぶんじ、ってなあに」
「かあああ。おまえらばかだ」がんちゃんは鬼の首を獲ったよう。「小学三年生にもなって、ぶんじも知らないとは。ばか。ばか。どうしようもないばか」
「聞いたことない」
とヒロシ。
「だけど、さすがはがんちゃん」
と小野。
「おおい。誰かあ」がんちゃんはクラス中に向かって大声を出した。「ぶんじ、知っている奴いるかあ。ぶんじ」
ざわざわざわ、とざわめく教室。
ただの一人も、〈ぶんじ、知ってるよー〉と応える者はいない。
がんちゃんは嘆く。
「かあああ。情けない。全滅か。ばかだらけだ。おまえら大ばか。ばかばかばか。ばかの集まり」
がんちゃんは黒板まで行き、チョークを手に取る。そして、カッカッと書いた。
《文字》
「これが、ぶんじ。
おまえら勉強しろ。ばかにもほどがあるぞ」
最初のコメントを投稿しよう!