1 ばか

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1 ばか

 休み時間の教室。  がんちゃんは、ヒロシと小野に言った。 「おまえら、ぶんじ、って知ってるか」  ヒロシが聞き返す。 「ぶんじ?」 「そう」  小野が首をひねる。 「ぶんじ、ってなあに」 「かあああ。おまえらばかだ」がんちゃんは鬼の首を獲ったよう。「小学三年生にもなって、ぶんじも知らないとは。ばか。ばか。どうしようもないばか」 「聞いたことない」  とヒロシ。 「だけど、さすがはがんちゃん」  と小野。 「おおい。誰かあ」がんちゃんはクラス中に向かって大声を出した。「ぶんじ、知っている奴いるかあ。ぶんじ」  ざわざわざわ、とざわめく教室。  ただの一人も、〈ぶんじ、知ってるよー〉と応える者はいない。  がんちゃんは嘆く。 「かあああ。情けない。全滅か。ばかだらけだ。おまえら大ばか。ばかばかばか。ばかの集まり」  がんちゃんは黒板まで行き、チョークを手に取る。そして、カッカッと書いた。 《文字》 「これが、ぶんじ。  おまえら勉強しろ。ばかにもほどがあるぞ」
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