エンドレス☆ワルツ

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         -26-  私立高校入学試験の日。僕は麻衣と静香と一緒に試験を受けに行った。僕と麻衣は一般会場で、静香は特別選抜会場で試験を受けた。  僕は結局、B判定のまま本番の試験を迎えた。僕は最大限に努力したが、英語と数学で苦手な分野が残されたままで、それが試験に出たりしたら終わりだと思っていた。  この私立高校のキャンパスはとても立派だった。広大な敷地に、広いグラウンドやテニスコートがあり、体育館が二つあった。モダンなデザインの校舎に、教室には木材がふんだんに使われ、とても優しい雰囲気を醸し出していた。殺伐とした雰囲気の市立高校とは違い、この高校なら充実した生活を送ることができると、僕は思った。そして僕は何としても合格して、麻衣と一緒に通いたいと思った。  僕の入室した試験会場の教室にはすでに40人ほどの受験生が席に着いていた。みんな落ち着いていてとても優秀に見えた。  試験開始の合図とともに、頭が熱くなった。周囲の受験生の姿が消え、僕はこの会場にただ一人でいて問題に立ち向かっているように感じた。僕はひどく集中した。潜在能力(ポテンシャル)の全てを引き出し、自分でも驚くほど深い記憶を呼び起こしながら僕は問題を解いていった。しかし・・・。   「英語と数学で苦手な問題が出た・・・。それぞれ一問ずつだけど」 「わたしには英語はそれほど難しくなかったな」 「五科目とも想定内の難易度でした。なので、うっかりミスが命取りになる試験です」 「僕のは、うっかりどころじゃないよ・・・。受かったら奇跡だ」 「そんなこと言わないでください」 「静香はどうだった? ピアノの試験」 「ああ、みんなすごい技巧で驚いたぜ。とてもでは(かな)わないと思った。でもさ、奴らの演奏は凄いだけだった。心に訴えかけてくるものは何もなかった。わたしは、わたしなりに精魂を込めて弾いた。悔いはない。あとは祈るだけだ」  僕たちは寒風の吹くなか、私立高校のキャンパスを後にした。    
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