3人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
-21-
帰りのホームルームにて。
「ごめんなさい。私、本当は声を出すことが出来ます」
席から立ち上がって、麻衣が言った。
「私、ずっとイジメにあってました。何を話してもダメで、人としゃべるのが嫌になりました。それで転校するたびに声が出せない病気ということにしてもらいました。結局どの学校に行っても、私はダメなままでしたけど。私はここでダメならもう学校には行かないつもりでした。でも、ありがとう。私はとても素敵な人たちと出会うことができました。ありがとう。静香さん。俊彦さん。そしてクラスの皆さん」
「バカヤロー! オレの名前を出すな! オレは何もしちゃいない。むしろ・・・いや・・・でも、まあ話せるようになったのは良かったな」
「先生も驚いたぞ、佐倉君。まあ、良かった」
ホームルームが終わった。
僕は麻衣に何と言ったらいいか、全く分からなくなっていた。
「私が話すとおかしいですか?」
滑らかな活舌で麻衣は僕に訊いた。
「私、この前、俊彦さんに話しいことがあるって伝えました。それは私が話すことが出来るってことです。けど、私、ステージの上で私、感激してしまって・・・」
ふたりで廊下に出ると、静香が僕たちを持っていた。そして僕たちに言った。
「トオルが二人に話があるってよ」
静香の背後から鮫島が姿を現した。
「完敗だ。約束通り、俺はお前たちのこと、ずっと守ってやるぜ。困ったときは何でも相談しな」
「だそうだ。よかったな、俊彦、佐倉」
それから、静香が鮫島の手を握った。
「しかたねー。佐倉の代わりにオレが付き合ってやるよ。髪の短い女は嫌いか?」
「髪にこだわりはねえ」
鮫島が言うと、静香が顔を赤く染めた。そして二人は寄り添って僕たちから離れていった。
玄関から外へ出て、僕たちは並んで帰路を歩いた。
「静香さん、鮫島さんのことが好きだったんですね」
そう言って、麻衣は微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!