3人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
-22-
合唱コンクールが終わると、3年生は本格的な進路選択の時期に入った。成績が真ん中位の僕は、中堅の公立高校を目指すことにした。麻衣は県内の難関私立高校を受験すると決めていた。その高校は、特別入試枠という制度があり、試験がピアノの実技と英語の筆記試験だけというもので麻衣はその枠で受験するらしい。恐らく麻衣ならそれで合格するのだろう。
*
「静香、お前はどうするつもりだ」
生徒と先生との二者面談が進路指導室で行われた。
「オレ、卒業できんのかよ」
「いつも自分で言ってたろ? 義務教育だから卒業は出来る」
「じゃあオレ、働くよ」
「いいのか?」
「今さらオレが入れるガッコなんてあんのかよ」
「お前は将来、何がしたい?」
「そんなこと考えちゃいない」
「静香、お前は成績が良かったし、音楽の才能もあるんだがな」
そう言って千葉先生は黙り込んだ。
「センセ。自業自得だよ。好きにやってきたんだからさ。オレはオレでなんとかするさ。センセ、ありがと」
静香が席を立とうとした時、千葉先生が言った。
「一つ提案がある。一流の高校に入れるかもしれないぞ」
「え?」
*
放課後、僕と帰り道を歩いていた麻衣に、静香が後ろから声を掛けてきた。
「なあ佐倉、お前、あの高校を受験するのか? 入試がピアノと英語だけのやつ」
「はい。そのつもりです」
「やっぱりな。その枠って合格するの1名だけだもんな。佐倉が受けるんなら、やっぱ、オレあきらめるよ。じゃ」
そう言って、静香は校舎の方に戻って行った。
最初のコメントを投稿しよう!