エンドレス☆ワルツ

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  -23- 「中田。ちょっと顔かせ」  ある日、朝のホームルールが始まる前に、鮫島が僕のクラスに来て僕を廊下に呼び出した。 「静香が高校を受験しようとしているの、知ってるよな」 「ああ、そう言えばこの前、何かそんなこと言ってたな」  それから突如、鮫島が土下座した。 「すまん。佐倉に、一般入試で受験するように頼んでもらえないか」 「は?!」 「静香が行けるかもしれない高校は、特別入試制度があるその高校だけだ。佐倉には一般入試で受験してもらうよう、お前から頼んでもらえないか」 「静香から言われたのか」 「いや。オレが勝手に頼んでるだけだ」 「そんなに都合よくいくかよ・・・」  僕と鮫島が話していると、麻衣が廊下に出てきた。 「また私のことですか?」  鮫島が立ち上がった。そして麻衣に言った。 「あの高校を一般入試で受けてほしい。佐倉なら一般入試でも受かるだろう?」  麻衣は戸惑いの表情を見せた。 「鮫島。佐倉さんの人生を狂わすようなこと言うなよ。そもそも、全国からその特別枠を目当てに受験生が集まるんだ。ピアノだけじゃなくて英語の試験だってある。静香は受からないよ」 「・・・そこをなんとか」 「今までさんざん好き勝手してきてさ」 「それはそのとおりだ。だがな・・・」 「鮫島さん。じゃあ私、一般受験にします」 「え?」  僕は驚いた。 「おめーら、何やってんだよ!」  後ろから静香の声がした。 「いや。これは・・・」  鮫島は頭を掻いた。 「どうせオレの受験のことだろ? トオル、余計なことするな。オレはオレでなんとかする」 「静香さん。私、一般入試で受験します」 「バカ!! 特別枠はおめーが受けろ!」 「いいんです。静香さんが特別枠で受けて下さい。私、静香さんと同じ高校に行けるのなら嬉しいです」 「お前・・・。オレはお前にさんざん嫌なことしてきたんだぞ。なのに・・・バカか、お前・・・」 「私が人前で話が出来るようになったのは、静香さんのおかげでもあるんです」 「そんなのカンケーねーから!」 「静香さん。一緒に行きましょう。あの高校へ」 「お前・・・」  言葉を無くした静香の目に涙が浮かんだ。
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