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僕も、麻衣や静香と同じ高校を受験する決心をした。放課後に自習室で僕は麻衣から勉強を教わった。夏休みに初めて僕は塾に通い、そこで夏期集中講座を受けた。
新学期に学校で受けた模擬試験で麻衣は志望校がA判定だった。よほどのことが無い限り、麻衣は合格する。
「わたしは、F判定だよ。ま、わたしは一般入試じゃないんだけどさ」
静香が僕と麻衣に言った。
「僕はD判定。やっぱりだめだよ。よほどのことが無い限り受からない」
僕の言葉を聞いて麻衣は微笑んだ。
「まだ可能性があります。半年あれば、B判定まで必ず上がります」
静香の仲間の女子たちも人が変わったように勉強した。あの合唱コンクールでの優勝以来、1組はとても団結力が強くなり、みんなで助け合って勉強をし、5クラスあるなかで突出して偏差値の高い、まるで特設進学クラスのような体をなしていった。
秋の模試で僕はC判定になった。冬休みにまた塾へ通い冬季集中講座を受けた。そして3学期初めの模試でB判定となった。
「わたしの英語の判定はBらしいよ」
静香が僕と麻衣に言った。
「へえ、すごいじゃん。ほぼ受かるよ」
「そうですね」
「たださ、ピアノがダメみたいなんだ」
「は?」
「家に来る講師に言われたんだ。個性が強すぎるって。楽譜と違うって。だから判定不能だってさ。それってF判定と同じじゃね?」
「あの高校は比較的個性を重視すると聞いています。けど、それなら楽譜通りに弾いてください。王道で行きましょう。静香さんにはとても簡単なことのはずです」
「それがさ、弾き始めるとつい自分の世界にはいっちゃうんだよね」
「けど、試験に受かるためには、そうするしかありません」
「いいよ。わたしが弾きたいように弾いて落ちたならそれでいい」
「ダメだよ。せっかく佐倉さんがくれたチャンスなんだ。きちんと弾こうよ。受かってから好きに弾けばいいじゃん」
「私もそう思います」
「うん。そうだな」
静香は頷いた。
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