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僕たちの高校生活が始まった。僕は部活には入らずに、勉強に集中することにした。偏差値の高い高校に入ったので、みんなについくのがやっとのように思えた。
そして・・・
「ようこそ無厳坂高校ピアノ部へ。私は顧問の東雲光莉です。よろしくね」
「私は、佐倉麻衣といいます。よろしくお願いします」
「私は特別枠で入学させてもらいました。神童あかりです。よろしくお願いします」
「オレは伊集院静香。あの、センセー。ひとつ聞いてもいい? どうしてオレは入学できたの?」
「ようこそ、静香さん。また会えて嬉しいわ。今回、特別枠の1名の他に、特別にあなたも合格させました。それは私の独断で決めました」
「オレのピアノは規格外だったはずだよ。センセーはオレのピアノの審査をしたうちの一人だよね。落ちて当然だったんだ。オレは楽譜通りには弾かなかったからね」
「試験ではみんな素晴らしい演奏でした。そしてその中で神童あかりさんが断トツで一番でした」
「オレは箸にも棒にも引っ掛からなかったんだよね」
「あなたの演奏。確かに楽譜の指示とは違う演奏の仕方でした。ショパンのワルツ14番をあんな弾き方をする人は初めてです。でもあなたの演奏はとても素敵でした。純粋でとても優しくてとても透明感がある。あなたの演奏は私の心を激しく揺さぶりました」
「あんなんでよかったのかよ」
「私はあなたの無限の可能性に期待している」
「センセー、オレは・・・」
「これからはわたしと言いなさい」
そう言って東雲光莉は微笑んだ。
『エンドレス☆ワルツ』
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