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結果はいつだって裏切る。嘘をつく。そんな世の中でも、僕だけは一乃々佳のためにできることをしたい。
最後、僕は暗黒魔法少女に想いを告げる。
本当は、一乃々佳の気持ちなんてとっくの前に気付いてた。
でも、一乃々佳は県外の進学校に行くために頑張っていたのも隣でずっと見てきた。眩しかった。そして僕は……劣等感に勝てなかった。
「あのさ、僕、一乃々佳のこと……ずっと好きだった」
「………………わたしも好き」
知っていた。だからこそ、今日までずっと言わなかった。
暗黒騎士だったころから一乃々佳と僕とでは不釣り合いだってことわかってた。一乃々佳は勉強もスポーツできる。絵だって上手いし、いつも優しい。笑顔が可愛い。あと、いつだって一生懸命だ。キラキラしている、そんな君が好きだけど。
けど、太陽に焼かれるようなその熱量に、強光に目がバグるように、それでいて包み込むような優しさが、僕に劣等感を与えているなんて一乃々佳はまるで気付いていない。
僕が高嶺の花を刈り取ったところで、花瓶に生けても、鉢に植え替えても、たぶん枯れる。だからその地で気高く咲いていてほしい。僕が本当の聖騎士になれたその時に、その花を取りに行くから。
そんな一乃々佳でも暗黒面の力量に関しては僕より劣っている。だから暗黒面、いや、嘘つきになるなら、なるならなあ! 僕が言ってやる、わからせてやるよ。
「まったく、やっぱり暗黒魔法少女は嘘が上手い」
本当はこんなこと言うべきではなかったのかもしれない。
「な、わたしは……」
今は僕がまだ未熟。聖騎士になったそのときに、また迎えに行くから、それまでは――、優しい嘘をついていてほしい。暗黒魔法少女、なあわかってるだろ。
「わたし……そう! わたしは暗黒魔法少女、嘘の塊のような悪者! 聖騎士の誘惑になんて騙されるもんか」
「くそぅ。これで暗黒面から暗黒物質を取り除こうと思ったのに。ぐぬぬ」
「くっくっく。甘いぞ聖騎士!」
ありがとう。これでいい。これで……。
よく言ってくれたね一乃々佳。
僕だけ好きだと伝えてズルい気がするけれど、それは君だって僕に対してこれまでしていたことだ。ちょっとしたイジワルかもしれない。
だから、僕が暗黒騎士だった時のように、暗黒面の辛さを噛み締めて。嘘をついて生きるという強さを知れば、もう大丈夫。
高校生活、僕がいなくても上手くやっていけるよ。きっと――。
「なあ一乃々佳………………がんばれよ」
ひとひらの花びらがちょこんと彼女の頭の上に乗っかった。
暗黒魔法少女は白鳥の構えで片足を上げ、横ピースで目を覆っていた。
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