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中学生の頃に、読んだ小説がある。
それは、学校の図書室に置いてあって、表紙が見えるように立てかけてあるような、人気の本ではなくて。
小説コーナーの端の端、間の本が抜かれて、倒れるように置かれていたその本。
内容はなんてことない、少年がただ1人、旅をする話。
誰もいない場所を、ひとりで、ただ淡々と、旅をする話。
結局、彼は誰も見つけられず、一人ぼっちで宇宙の塵となる。
そんな切なくて…なんだか怖くなる、そんな小説。
初めて出会った感情で、俺は今でも、その本を読んだ時に感じた感覚を、言語化できていない。
ただ、衝撃を受けた。
この人のような本を書きたいと思った。
結局図書室に、その人の別の本が入ってくることも、またその本がシリーズになったような様子もなかった。
たった1冊のその本で、俺は、小説家になりたいと思った。
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