光る花びらを探せ

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「あらまあ、こんなところに素敵なおもちゃが! 残念、ここは『捨ててくださいゾーン』だわ! すぐに捨てなくちゃ!」  黄色くなりそうな声を目一杯ピンクにした鈴子は、ウルトラマングッズやぬいぐるみを抱え上げた。  途端、どこからか海がすっ飛んできてウルトラマングッズを奪い、おもちゃ箱に収めた。  遅れて、春香が飛んできた。庭の木に登っていたのを鈴子は知っている。鉄棒や上り棒が大好きな子で、この新居の庭にちょうどいい枝っぷりの木があって、見るたび血が騒ぐらしい。  春香もその等身大のぬいぐるみたちを慌てて箱にしまう。鈴子の父、つまり春香の祖父は海外出張が多く、そのみやげものだ。海外のぬいぐるみはリアルでグロっぽくてかわいくないと鈴子は思うのだが、春香は妙に気に入っている。 「危ないところだったわあ! 置きっぱなしになってたらママ間違って捨てちゃうから! 春香も海も気を付けてね!」 「……はあ~~~い……」  春香も海も、片付けが嫌いだ。遊んだら放り出して逃げていく。で、鈴子は毎度こうやってやんわりニコニコと誘導するのだが。 「ざけんなよ! 言う前に片付けとけや! 何度も言うの、疲れるんだよ!」  直後、鈴子は花柄の花瓶を取り上げ、その奥底に向かって叫んだ。ストレスは溜めちゃいかん、さりとて怒るのも我慢するのもストレス、よって大体このようにして鈴子は日々をかわしている。  そうでなくても片付けなくてはならない荷物が段ボールのまま山積みなのだ。夫の竜也の転勤で、引っ越したての今。とりあえず真っ先に取り出しておいたのがこのストレス吐き出し用の花瓶だった。  
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