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「よっ、と」
春香が身軽に飛び降りた。
「お姉ちゃん、何してんの?」
「これを回収したのよ」
海は、春香が投げてよこしたそれを取り損ねた。慌てて拾い、土を払う。海の大事な宝物。ウルトラマンのカラータイマーだ。スイッチを押す。大丈夫、ちゃんと光る。青白く。
「朝ね、枝の隙間に埋め込んでおいたの」
「何でそんなとこに僕の大事なタイマーを……」
「あたしの宝物だって乗せたのよ。そして落とした」
春香は肩をすくめてベランダに並んでいる2つの影を指さした。猫と鳥の等身大ぬいぐるみ。
「どうして?」
「さあ。ママがそうしろって言ったのよ。今日の宿題、だって」
「ふうん?」
「あたしだけにできることなんだって。だから頼むわって。……何だかよくわかんないけど」
「うん……???」
「でも夜だと暗くて危ないから、木登りじゃなくて絶対にこれ登るだけね、って」
海がその2段式踏み台を見て首をかしげる。
「窓からじゃ全然見えなかった」
「でしょ? 木の陰に隠れるようにママと調整したんだもん」
「……何で?」
「さあ」
桜がハラハラと花びらを散らしている。
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