桜の君に

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 まだ、誰も起きていない静寂の中だったのか、それとも夢の中だったのか。  桜の花が一斉に芽吹いた。  燃え上がるような力強さがある一方で、その淡い色はなぜか儚げで、哀しい。  お月様のやさしい青い光で照らされたその桜の花は小さく、でも美しい。  僕はいつまでも黙ってそれを遠くから見つめていた。  すると、桜の木の影に誰かいるのを見つけた。  ああ、彼女だ。君こそがぼくが待ち望んでいた人。  桜の人。桜の君。  山桜霞の間よりほのかにも見てし人こそ恋しかりけれ  この歌をぼくに教えてくれた人は一体誰だったか?  
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