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スマホのアラームが鳴る。
優しいベルの音はお気に入りでここ3年は使っている。
いつもの自分の部屋、いつものベッドの上でしばらく見慣れた天井を見上げる。
窓のレースのカーテン越しに柔らかな朝日が差し込んで、遠くから鳥の囀りが聞こえてくる。
私は、この時間がいつも大好きだった。
「よし、行こう」
声に出して、ベッドから起き上がり洗面所へ行って鏡を見れば、いつもより少し綺麗な自分がいる。
一階へ降りると、パンの焼き上がる香ばしい香りと、コーヒーのいい香りがする。
対面式のキッチンには、いつもの様に父が立っていていつもの挨拶を交わして
朝の日差しで明るいリビングに飾られている母の写真へと
「おはよう、お母さん」
笑顔で声をかけて、写真の横に庭で摘んできた桜の花を父が飾ってくれているのを見て気持ちが暖かくなる。
食卓へ着く前に、父と並んでキッチンへ立ち、野菜たっぷりのスープをよそいながら思い出してしまう。
小学校2年生で母が亡くなってから、いつもそうだった。
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