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料理が苦手な父。
初めて作った朝食の目玉焼きは、焦げていたし、失敗しすぎて卵1パックは一瞬でなくなっちゃうし。
それでも、一生懸命に作ってくれる父のことが大好きで私の誇りだった。
焦げた目玉焼きは、少し苦かったけど美味しかった。
中学校へ進級してから、私は思春期を満喫しつつ
大人の階段を登ることへの不安と、憧れの間で揺れていた。
そんな時は決まって父と衝突してしまい
「お母さんが死んだのは、お父さんのせいだ」
そう心無い言葉をぶつけたのに、父は怒りもせずに
「寂しい思いをさせてごめん」
と謝ってくれた。それなのに、そんな父に背を向けてしまった。
それでも翌朝は、美味しい朝食をいつも通り準備してくれた。
「あ、やっちまった」
キッチンで父がそう小さく叫ぶ。
私は、食卓へスープを運びながら父へ声をかけると
「これ……肝心な日にこれだから、父さんはやっぱりダメダメだな。ごめんな。」
あの日のように焦げた目玉焼きをテーブルへ並べながら、そう言って笑う父はいつの間にか目尻に皺が増えているし
白髪もちらほらと目立ってきている。
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