1話

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「……っ」 「ん……そんなに固くならないでよ。楽しませてあげるからさ」 (無茶言うな!!)  ストーリー的なことも、男女の交わりについても、この先どうなるかは知っている。  だが、あいにくこちらは処女だ。 (残念ながら前世でも経験ないしね!!)  怖いものは怖いのだ。  しょうがないだろう。 「……ふむ。君、もしかして、処女?」 (何故バレた!!)  この展開はゲームではなかった。  それもそのはず、本来の主人公は処女ではないからだ。  元々、王子を誑し込むつもりで近付いている設定なため、かなり誘惑なども上手い。  だが、ルーナは処女だった。 「……だったらなんなんですか」 (あいにく私には野心がないもんで!!)  そういう能力に長ける必要を感じなかったもので、のほほんと18年間生きてきたのに。  まるで帳尻合わせでもされるように、ある日突然王子の専属メイドに大抜擢される始末。 (ホント一体全体どーなってんの!!)  さすが乙女ゲーム。  ご都合主義!!  いくら前世で好きだったからと言って、この世界を楽しもうなんざ到底思えない。  何故ならこれは現実だからだ。  どんなにきらびやかな世界に見えても、ここはルーナにとって現実なのだ。  ルーナが一言だけ肯定すると、王子は目を丸くした。  そして、ぽつりと一言。 「……珍しい」 「失礼な!」
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