177人が本棚に入れています
本棚に追加
珍しいとはなんだ、珍しいとは。
18年間貞操を守ってきた清き乙女に対して言うセリフか!
立場も忘れルーナが思わず突っ込むと、王子はそれこそ珍しく声をあげて笑った。
「ふ……ははっ! 気に入った! お前は僕のメイドに相応しい!」
「……は、はぁ!?」
王子のルーナに対する呼びかけが「君」から「お前」に変化する。
一体何処が『相応しい』ところなのだろう。
こんなシーンはゲームになかった。
本来のこのシーンは、初めて王子と顔を合わせた主人公が、従うフリをしながら王子を魅惑するという(主人公が)緊迫した艶やかなシーンで……。
(え、ちょ、私、ある意味魅惑的なシーンだったのを台無しにしてない!?!?)
混乱して目を白黒させるルーナに、王子は息がかかるほど顔を近づけた。
(うわ! 何!)
さすがメインヒーローとでも言うべきか、王子は抜群に整った顔立ちをしているのだ。
簡単に顔を近づけないでほしい。
「決めた。お前はこれからずっと、僕のモノだ」
(は、はぃいいいい!?)
こんなセリフ、脚本にない。
いきなり本筋からすれてしまった物語に、ルーナは困惑するしかない。
王子から与えられる甘やかなキスを、納得のいかないままにルーナは受け入れざるを得なかった。
(だって、逃げられないいいぃ!)
最初のコメントを投稿しよう!