手紙とメダルと

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『悪ぃな、うちの馬鹿息子が迷惑かけた。 おーおー派手に割れちまったな……そりゃ怒るわ』 んん? 王様、が、うちの馬鹿息子がと仰る……ということは、目の前の卵の仇はこの国の王子?! 俺は、気まずいという感覚よりも最早青くなった。 怒りに任せてなんてことをしてしまったんだ、と戦いた。 ダイはダイで押され気味だったことが余程に悔しかったのか、違う意味で泣きそうな顔をしていた。 『ほれ、仲直り。 ダイも喧嘩売る相手が悪かったな。 見る目だけは我が子ながら凄えと思うけど』 王様に小突かれたけど、ダイは依然膨れっ面のままだった。 俺はダイの顔を覗き込みながら、精一杯笑って言った。 『おまえ、つえぇな! すっげーたのしかった……またやりたい!』 それだけであいつは機嫌を直した。 『おう、つぎはまけねぇ』と気持ちよく笑って返してきた。 この瞬間に俺は、ダイを気持ちいいくらいに清々しい奴だと理解した。 王様は卵を買い直してくださって、俺の両親に謝ると仰って家までついて来てくださった。 突然の王様と王子の御訪問に俺の両親はびっくりしていた。 あの人は買い直した卵にて、俺たちにプリンを拵えてくれた。 スイーツ大好きの王様もダイも物凄く喜んでくださった。 その一方で王様は俺の両親に進言されたのだ……俺を城で預かりたい、と。 唐突な申し出に両親は固まったが、俺は即『行きたい!』と返答していた。 王様といえばスーパーヒーローでその王様に見込まれたのだ、嬉しいに決まっている。 それにダイと一緒にもっと強くなりたいと真っ先に思った。 家の近くの道場に通いたい……自身の強さを磨きたくて俺は、つい先日に父さんに打診したばかりだった。 だけど困った顔をした父さんに、経済的理由で断られていた。 子供ながらに色々ショックだった。 父さんに気を遣わせてしまったことも、自分の力を伸ばす術がないという現実にも。 『……寂しくなるわね』 あの人がポツリと零した。 王様は、家族で城に越してきたらいいと仰ってくださったけど、父さんが断った。 『息子が王様に目をかけていただけましたこと、大変喜ばしく思いますし、ありがたいことだと受け止めています。 ですが、私は息子に乗っかって楽をしたい訳ではないのです。 私には入城に値するような実力がありません。 そんな中で城に寄せていただくなんて……例え息子が親と離れて寂しい思いをすることになるのだとしても、私のプライドが許さないのです』
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