余所者のいない町

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「あぁ、そうだったわ。あなた、他所から来たから知らないわね」  不意に突きつけられる疎外感。  確かに私は他所からこの町に引っ越してきた。隣の家に住む彼女も悪気があって言ったわけではないのだろうが、その言葉が余所者だと言われているようで悲しくなる。少しでもこの町に溶け込みたい、と努力してきたのが無駄だったのではと苦しくなるではないか。  都会は良くも悪くも新しく来た者に無関心で、一般的な常識さえ持っていれば好きなように生きていくことができる。しかし、田舎はそうもいかない。だからこそ、溶け込む努力を怠らなかったのだが、今度町で行う神事のせいでまだまだ余所者扱いされていることがあらわになってしまった。 「神事はね、この辺りで三百年ほど前から行われているの。その頃、ここはもちろん深い山の中で生きるのも大変だったと聞くわ。そこで、神に自分たちの暮らしが良くなるように祈りを捧げたそうよ」  豊作を願う祭り、雨乞いなど様々な理由から、人々は神に感謝し祈りを捧げてきた。ここでの神事もそういった類のものなのだろう。 「この神事に参加することで、あなた達も皆から受け入れられると思うわ。頑張ってね」 「え、あの……なにか私たちがすることってあるんですか? あるなら教えてください」 「そうねぇ。私が教えるより、神主さんから聞いたほうがいいわ。ほら、又聞きだと正確じゃなかったりするでしょう?」
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