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溢れる想い
タサキはじっと京子を見ていた。
今二人きりの密室で目の前には20年間恋焦がれていた女がいる。
もうこれ以上は抑えられそうになかった。
「シンちゃん…?って昔同じ施設だったあの…?」
「あぁ」
「うそよ!なんで上海にシンちゃんいるのよ!」
「迎えが遅くなってすまなかった。」
「はぁ?じゃあなんでこの前会った日に言わないのよ!」
「言おうとしたけど時間が足りなかったんだ…怒らないで聞いてくれ。君のお兄さん…いや、施設で一緒だった拓人兄ちゃんとは実は少し前に接触していた。
ある組織に潜入してもらって持ち出して欲しい物があったんだがどうやら拓人は俺を裏切ったらしい。
二重スパイかもしれない。
どこかに持ち去ったようだ…
だから君にも接触をした。あの日はほんとはこの話をしたくて君に会ったんだ。
でもほんとはもっと違う形で早く君の前に現れたかった…だって俺は…」
「なによそれ。あんたなにしてくれんの?拓人兄ちゃん巻きこんだのあんたでしょ?今更なに言おうとしてるの。
聞きたくない。やめてよ」
「京子…」
「あたしとお兄ちゃんあれからどんな思いで生きてきたかわかる?わかんないでしょ?シンちゃん途中でいなくなっちゃったしあのあと色々あって施設も追い出されてお兄ちゃんと兄弟のフリして力合わせてきたの!
必死に生きてきたの!
幸せじゃないけどあたしたちまだそんなに不幸じゃないよねって笑って励ましあってきたの!
あたしのことどこまで知ってるかしらないけどいまさら構わないで!」
「京子!!」
立ち上がったタサキは京子を強く抱き寄せた
「ちょ…やめてよ…はなして…」
「いやだ」
「やだ…はなして…」
言いながら京子は泣いている。
タサキは一層強く抱きしめた。
「…シンちゃん…バカ…遅いよ…京子ずっと待ってたのに…シンちゃん迎えにくるって言ったじゃん…京子もう綺麗な体じゃないじゃん…もうシンちゃんに会えないって思って…あたし仕事でたくさん抱かれた…」
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