快方

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「こんにちわ。昨日俺のとこ盗まれてよ。もしかしたら今日配布あるから来るんじゃないかと思って見張ってたんだよ。」 「ホントですか?俺も昨日やられたんですよ・・・」 「あぁーそっちもかー。でもさ、自分の寝床の横座ってたらさ、さっき若い兄ちゃんから二千円貰ってさ。で、そっちにもお札入れてたんだよ。」 「そうなんですか?すいません、色々ご面倒かけちゃって。」 「いやー、いいよいいよ。早く中見ておいで。」 「ハイ。すいません、ありがとうございます。」 "トシさん、寒い中ありがとう。" 心の中でも礼を言い集金箱を確認する。 ガサガサ・・・・・ 確かに、トシさんの言った通り千円札が二枚入っていた。 "よし、体の回復のためだ。これで温かいものでも食べて力つけるか。" マサオは再び外に出て、ビル街の方へと向かっていく。 トシさんへのお礼のコーヒーを買うことも忘れずに。 みぞれは雨へと変わり、すぐに小雨に変わっていった。 冷たい風も、冷たい雨も何のその。 今のマサオは気持ちも足取りも軽かった。 ぶり返さない事だけが心配だが、今は今で心の温かい人が周りにいるのだ。 何とかやれるだろう。 路上の冷た過ぎる冬を越えるのに最も必要なのは、人の暖かさなのかもしれないとマサオは強く思ったのだった。
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