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奇跡
〜○月○日 日曜日〜
前日に銭湯へ行ったためか。寝つきも良く昼前までぐっすり眠れた。
早朝に一度目覚めたものの、寝つきも寝起きもいい上に体も軽い。
いつも行くネカフェと大体同じ距離ならば、断然湯船に浸かって疲れを取る方が良いに決まっている。
好きな時に風呂に行き、また飯を食い、また適当に寝る生活を続けていたが、ここに来てマサオの生活のリズムが固まりつつあった。
そのまま寝起きがてら、作業を進めようとした。
その時だった。
「コンニチワ!アキラメナイデ!」
年末のアイツらだ。協会の連中がやってきた。
見回りだろうか、何なのだろうか。
第一声でこれを言われたら出る気も失せる。
いないと分かっていても彼らは続ける。
「こんにちは、いらっしゃいますか?」
「お食事持ってきました。いりませんか?」
「置イテオキマス。アキラメナイデ!」
"困った人に『アキラメナイデ』と言えば元気になるよと教えられているだろう身だ。多分、言っても分からないだろうからな。"
一瞬だけ一言言ってやろうと思った感情を胸に押し殺し、黙って寝床に篭った。
勝手に扉を開いたりはしないからまだマシだが、一言言うならそんな日が来たらだな。
前回同様、どうも腹の底では路上者のことをナメくさってる様にしか思えない。
あの笑顔も言動も胡散臭く見えてしまう。
彼らが帰ったタイミングで、寝床から一度出て外の空気を吸う。
同じく暇を持て余しているのか、座って新聞を読むお隣さんを見かける。
"あれ、スポーツ新聞だよな。しかも馬券らしきもの持ってるし。競馬やってるのかな。あれって楽しいのかな?"
マサオは気晴らしにターミナル駅近くにある場外馬券売り場に出かける事にした。
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