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あっという間にレースは終わる。
同時に周りの雰囲気がガラッと変わる。
外したのか騒いでいた人は大人しくなり、逆に当たったのか大人しく見ていた人が大喜びしている。
このたかだか二分くらいのレース一つで、人間の感情が大きく揺さぶられる様子が妙に面白く思えた。
まさに漫画とかではないが、"この一瞬にかける!"といった感じで。
とりあえず、マサオは結果を確認する。
「えーっと⑩、⑧、②・・・あれ?三連複当たってる!168倍!しかも二百円賭けてた!」
あまり考えないで買った馬券が三万超えで返ってきた。
いわゆる万馬券になってだ。
外してたら受付の女性に八つ当たりの感情を持っていたかもしれないが、本当に当てれてよかった。
"倍率見て、適当買っただけ。ビギナーズラックか・・・!それでもいいけど。"
少しというか、かなり足しになった事が嬉しかったのか、帰りしな久々にマクドナルドで思い思いのメニューを買って寝床に戻った。
紙袋にいっぱいのポテトとナゲット、ハンバーガーを見て、今日のご褒美という事にした。
喜びに満ちたマサオは、そのまま寝床の中の別世界で一人祝杯をあげる。
"たまの贅沢、こんな日があってもいいだろう。"
側から見たら大したことはない、路上生活者『瀬村マサオ』の贅沢な時間が始まったのだった。
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