きっと、会える。

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「僕、ですか?」 まだ線の細い、話している集団の中でもとりわけ若い青年。 真司と呼ばれた青年は、戸惑いながらも話す。 「故郷に……恋人を残してきたんです。帰ったら……祝言を挙げたいと思っとります。」 真司には、家族と同じくらいに大切な存在がいた。 恋人の、花枝である。 15歳の時に見合いで知り合い、いろいろと話も気も合ったので、4年間交際を続けている。 周りからは、もう結婚しているようにも見えるなど冷やかされながら、それでも二人は健全に、そして慎ましやかに交際を重ねてきたのだ。 「おぉ!それは良いことじゃ! 羨ましいのう。」 「祝言で浮かれていられるのも今のうちじゃぞ。やがて可愛い恋人も、祝言を挙げたら次第に化け物になっていくんじゃ。米兵よりも恐ろしいわい。」 「俺たちも、祝言に呼んでくれ!」 周囲の兵たちが途端に騒がしくなる。 いつもこの時間は、誰かの話で盛り上がる。 深夜の時間帯。 絶対に無いとは言い切れないが、米軍の攻撃が穏やかになるこの時間が、わずかばかりの兵たちの休息の時間なのだ。
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