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様々な策を弄しても、一向に覆すことが出来ない戦況。
ここで、大日本帝国軍は最悪にして究極の作戦を立案する。
「今から発表する作戦は、強制ではない!」
部隊長のこの一言で、真司たち兵士たちはその作戦がただ事ではない大きな作戦であることを悟った。
同時に、身の安全が保障されない作戦であることも。
「……これを、神風特別攻撃隊と呼ぶ!!」
この時、真司は悟った。
この作戦に志願したら、もう生きて家族に、そして花枝に会うことは無いのだろう、と。
花枝との祝言の夢を語ったあの日の同僚たちは、その時すでに半数以下に減っていた。
度重なる空襲、そして地方へと攻撃に向かい、帰って来なかったのだ。
あの日、大笑いした夜のことを思い出す。
「お父さん、お母さん……」
自分を育ててくれた両親のことを考えた。
父は、持病があり徴兵に応じることは出来なかった。
母は、寄る年波に足腰が少々弱くなっていた。
「志願者は、5日後にこの場所に来るのだ。もちろん志願は強制ではない。しかしこれだけは覚えておけ! 我々が、大日本帝国軍が勝利しなければ、いずれ皆、死ぬのだ!!」
この司令官の言葉が、どれほどの若者を死地に向かわせたのか……。
それはもう、誰も知らないことである。
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