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「実は僕は他の星から来たんだ。その星の仲間を救う使命がある。沢渡さんとは付き合えない」
「へ?」
もしかしてバカにしている? でも、王子君の表情は真剣そのものだ。冗談を言ってるようにも見えない。つまり……重度の中二病ってこと?
戸惑う私に王子君はキリっとした顔で言った。
「絶対に秘密だよ。僕が他の星から来たってこと」
これで笑わない人がいるなら会ってみたい。きっとその人は日本語が通じない人だ。そして、この瞬間のために日本に生まれて日本語を話せるようになったんじゃないかな? と思えるくらい私は笑った。
その夜、私は親友の里香に電話して王子君に告白したことを報告した。絶対に秘密と言われた「別の星から来た」というところだけは割愛して。
使命があるから私とは付き合えないって、と話したら、里香も爆笑する。
「王子、何者だよ~! その内クーデーターでも起こすんじゃない? そしたら、国民の義務に『棒高跳び一メートル』が付け加えられるかも! ヤバい、跳べない! 私だけバーをくぐらせてもらおうかな? リンボーダンスで!」
「ちょっと里香、笑いすぎだよ。振られたって話をしてるのに」
少しだけ不満そうな声を出すと、お調子者の里香はいつもみたいにゴメン、ゴメン、ゴメンと三回謝ってから言った。
「でも、香澄、もう吹っ切れてる口ぶりだったからさ」
「うん。何か自分の中ではスッキリしてる。王子君、ちゃんと振ってくれたから」
「何それ? まだ王子のこと大好きじゃん! そんなんで大丈夫?」
「え? 好きだとマズいの?」
「失恋って相手を嫌いになることでしか乗り越えられないらしいよ」
「そうなの? 私、今日振られてますます好きになった気がするよ……」
「香澄、王子沼にハマったね。大丈夫かな~? あいつ、悪い奴ではなさそうだけど何考えてるのかよくわかんないところあるからさ」
そう。そこが正に王子君の魅力なのだ。皆とは違っていて理解不能なところ。私はそんな王子君の内心を自分に都合良く想像してしまっているのかもしれない。
それでも、沼になんてハマっていないと言い張る私を里香は一しきりイジった後で話を変えた。
「そう言えば、成島水族館が閉館するって知ってる?」
「え? そうなの?」
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