2話 ラスボスメイドと合体

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2話 ラスボスメイドと合体

「母上に似て、可愛くなってきたな。前世とは大違いだ」  『ブレイブファンタジー』オンラインゲームで二週目スタートしたら、それらに似た異世界に転生を果たす。  火・水・風・雷・土・光・闇・聖を司る王族七大貴族と呼ばれ、俺はその闇を司る公爵家令嬢、シオン・ダークロードとなった。  今は十歳のロリ美少女。  明るい褐色肌。  銀髪のショートヘアー。  銀色の瞳。  ムチムチの太ももが堪らなく最高に良い。  純白の洋服・ズボンだ。  鏡でいつもうっとり眺めていると、ガチャリとドアが開かれる寸前。  素早く胡坐をかいたら、身体から闇属性魔力を出して魔力コントロールで宙に浮かぶ。 「シオン様、魔力コントロールの訓練は如何ですか? 少し疲れたのでしたら休憩しましょう」  俺の世話係兼護衛を兼ねた闇の召喚獣・ドゥームズデイが胡坐をかいたら、俺はそのまま降りて股下に座る事になった。    色白肌。  漆黒のロングポニーテールを翻し。  漆黒の瞳は、全て破壊するという力強さ、全て飲み込む闇を感じる。  かなりの巨乳、スタイリッシュなスレンダー体型。  黒を基調としたミニスカメイド服を着ている。  彼女は代々ダークロード家に仕える召喚獣。  ゲーム世界だと俺と彼女が合体して世界を終焉に導くラスボスになるが倒され破滅するバッドエンド。  異世界だからか色々と違うのかもしれない、もしゲーム通りなら俺はそのバッドエンドルートを回避しなければならない。 「俺の魔力は全然大丈夫だよ。それよりドゥームの魔法を教えて欲しいな」 「シオン様は私が見てきた中で、魔法の訓練や修行が一番お好きな様ですね。それに魔力量も赤子の時から膨大過ぎる。歴代の中でもトップかもしれませんよ」 「初代闇属性のテネブラエよりも?」  最後の聖属性は国王とセイラ王女様が受け継いでいる。  遥大昔、転生神ニコルが異世界転移させた少年が勇者となり、八人のハーレムヒロインズと共に魔王を倒した。  その後全員と子作りした結果、子孫の八人の美少女となる。 「それは流石にと言いたい所ですが、私と同等……いやそれ以上かもしれません」 「じゃあ、ドゥームの魔法教えてくれる?」  『引き継ぎニューゲーム』したからLvカンスト。  《アイテムボックス》の中にある武器・鎧・アイテム類も全て入っている。  ゲームに似た魔法もあるが、この異世界独自に派生した魔法や剣技による技もあるらしい。 「ですが私の魔法は危険です。おいそれと人に向けて良いものではありません」 「モンスターとか襲って来る悪人には向けるかもしれないけど。知りたいだけだから」  ロリ美少女しか許されない技、目をウルウルさせ上目遣いで眺めていると、ドゥームは苦虫を潰した様な表情になった。 「それならば、わざわざ私の魔法を使わなくても、今のシオン様の実力で十分何ですが……」 「魔法に良いも悪いもないんだよ。使う人間が善人・悪人かそれだけなんだよ。ね? ね? ね? お願い!」 「それも一理あります……分かりました。ですが条件付きでなら許してあげます」 「……条件?」  俺はドゥームの腹部に抱き着き必死にお願いしてみると、理解してもらえたが教えてくれるだけマシと思うしかない。 「十歳のシオン様の魔力コントロールではたかが知れてます。間違えたの一言で街中・王国を破壊するレベルの魔法ですからね、コントロールは私がします」 「外部からコントロールする方が難しそう何だけど……?」 「いいえ、内側からします。私がシオン様の中に入って直に魔力コントロールをします。そうすれば王国崩壊レベルの魔法を抑えて闇属性初級魔法・《闇球(ダークボール)と同等になります」  「それは《魂融合体(クロスダイヴ)》ってこと?」  ゲーム世界では精霊Lv・召喚獣Lvマックスにした後解禁される、プレイヤーと召喚獣の合体システムだ。  単純に魔法属性の威力が上がり、召喚獣の魔法・技を繰り出せる様になり、男主人公はカッコよくなり、女主人公は可愛くなる。  彼女が俺を守ってくれるという意味にもなるし、何よりそのシステムはイフリートで試したら可愛くなったのを思い出した。 「冒険者の召喚士はピンチになった時に発動するらしいです。強力な技になりますが常時、お互いの魔力を消費し続けるという『諸刃の剣』です」 「俺達は『諸刃の剣』じゃなくいつでも使える様にしちゃえば良いんじゃないか?」 「……は?」  ドゥームが眉を八の字に歪ませ、目をパチパチさせ、素っ頓狂な声を上げた。  まるで『コイツは何を言ってるんだ?』という感情がヒシヒシと伝わって来た。 「いや、だからね。これが最強の技だからちょっとしか使えない。じゃ勿体無くない? 俺達はもっと訓練・修行して合体状態を保つ事で強さを維持するんだよ」 「それよりシオン様。午後から他の六人のお嬢様と王女様が、王城にてお茶会をするらしいです。今日は行かないんですか?」 「お茶会よりも、ドゥームと訓練してる方が好きだから良いよ」  前に参加したが、どこぞの貴族の男の子がイケメン。の話しかしないから、俺は死んだ魚の目をして過ごしていた。  お菓子とお茶は美味しかったが、上品で優雅な時間は退屈で仕方なかった。 「今までの次期当主達は私の訓練・修行が嫌だと逃げていたのに、シオン様だけは率先してくれているなんて、私は……幸せです‼︎」  あまりの嬉しさに悶絶しているが、これが世界を終焉に導く存在でいいのか分からない。  俺はドゥームの手を引いて、魔法訓練場へと向かった。 ♢♢♢  俺とドゥームはお互いに向き合ってる状態だが、ゲーム世界なら選択画面から発動出来るが、ここは異世界だからやり方がわからない。 「それで《魂融合体(クロスダイヴ)》はどうするの?」 「まずは説明からしますね。召喚獣の全魔力量を契約主が取り込む事を意味します。一人の身体に二人分の魔力量ですが、並大抵の人間は出来ません。王族貴族や魔法を極めた人等です」 「失敗したら?」 「魔力許容量オーバーしたら契約主は、身体の内側から爆発四散してしまうでしょう。ですが召喚獣の全魔力量が100%だとしたら、その内50%の魔力量をセーブする事で入る事が出来ます。私の場合はまず90%セーブから試してみます」  これは『諸刃の剣』と言われて、かなり強くなると思ったが、抑えた上での最強技という意味なのかもしれない。  俺の場合は最初からドゥームがコントロールしてくれるから心配はなさそうだな。 「わかった。そこからまた訓練して下げていこうか」 「その方が良いですね。では中に入りますね。魔力90%セーブはかなり厳しいですが……」 「よし、来い!」  ドゥームはヒト型の女性から、黒・金を基調とした体毛の雌ヤギを彷彿とさせる本体が一瞬見えたが漆黒の煙状になり、俺の心臓部の中に入って来た。 『何ですかこの広さ……私が100%を出して有り余る魔力量!? 心は本人の心象風景世界です。シオン様の世界は喜怒哀楽の感情も何も無い虚無です。そんな十歳にしてどんな闇を抱えて生きてるんですか!?』  闇の召喚獣に心配されるレベルって相当酷いんだな。  ゲームLv1000はあったから魔力量もかなりあるはずだ。  心の世界に関しては前世から父親からの虐待され、友達からの虐めがあったからだ。  どう誤魔化そうか迷っていると、ドゥームが続けて言う。 『私としては虚無の世界が一番落ち着きます。身も心も一体化する様な……闇そのもの……私にとって最高の癒しの場所です』  俺の心の世界を虚無の世界って言い例えると語弊があって嫌だな。  褒めてるのか貶されてるのか、素直に喜べないのがもどかしいな。 「俺の魔力許容量で全然大丈夫なら、ドゥームの全魔力解放してみてくれ」 『すいません、シオンさまぁ〜。気持ち良い世界でついセーブ解除したら、私の全魔力とシオン様の全魔力が混ざっちゃいましたぁ〜』 「それは良い事? 悪い事? 凄い気持ち良さそうに喋ってるけど、何してるの?」  真面目な喋り方だったのが、急に酔っ払いみたいに崩れた喋り方になり、全てがどうでも良さそうな感じだ。 『他人の魔力同士が混ざると拒絶反応が起きるのですが、相性が良い者同士はクロエ様と私みたいに闇属性魔力が混ざって、契約主に絶大な力を引き出すらしいです』 「メリットしか感じないけど、デメリットはどんな事があるの?」 『消費した魔力回復は二人分、混ざった私達は運命共同体なので死んでしまうと終わりです。別々の時は契約主が死ぬだけで、召喚獣は大丈夫何ですけどね〜』  他人事みたいにどうでも良さそうに言うドゥームだが、今は幸せそうでいいかな。  どちらも死ぬのは辛いが、より強力になるなら是非ともこの状態のが良いかもしれない。  混ざった魔力を全身に循環させてみると、全身から力と膨大な魔力が湧き上がるのを感じる。 「なんだこれは……!?」 「私の魔力を使ってるせいですね。見た目は変わっても中身はシオン様ですから、身体に影響が出る事はないのでご安心を」  ドゥームの容姿が加わったのか、俺の身体にも変化が現れている。  頭部にはヤギみたいな二本の湾曲した角が前方に伸びている。  洋服が黒を基調としたミニスカドレスに金のラインが入っている。  悪魔のコスプレをした女の子みたいになってしまった。 「魔法を使ってみたいが、使う相手がいないな……」  そのまま魔法訓練用の的に狙い撃つのも良いが、どれだけの威力か実感出来ない。街中を探してみると、国民が騒いでる様子だった。 「街中にミノタウロス?」  風魔法・《飛翔(フライ)》で空高く飛行して眺めていたら、その原因が分かった。 『ヴモオオオオオオオッ‼︎』  頭部はウシ型・胴体はヒト型のA級モンスター・ミノタウロスが暴れ回っていた。  魔導騎士団と冒険者が必死に抑えようとしている最中、一人の中年小太りオッサンが大きく叫んでいた。 「おい、ミノタウロスを抑えるだけで良いんだ! 闘技場で戦わせるミノタウロスだぞ! 殺すなよ? いいか絶対に殺すなよ! 貴様ら冒険者に幾ら出したかわかってるはずだ」  オッサンが雇った冒険者に怒鳴っていて、騎士団の女性達も国民も傍迷惑していた。 「弱ってるフリをして隙を見ていたんですよ。騎士団の皆さん、本当にすいません!」 「ここは私の睡眠魔法で……」  冒険者パーティーのリーダーらしき男性が必死に謝罪しながら、ミノタウロスの背中に飛びつき、剣で首を締めて意識を奪おうとする。  仲間の女魔導士が魔法で眠らせようと状態異常の魔法を放つ。 『ヴモオオオオオオオッ‼︎‼︎』  街中に響き渡る程の咆哮を上げた衝撃波で、冒険者パーティーは吹き飛ばされた。  国民の避難が終わり、周囲一帯に防御結界を展開した女性魔導騎士達が動き出す。 「コイツを殺さずに抑えろってのが無理に決まってんでしょ? しかも暴走状態(レイジフォーム)になってるし」 「ここは魔導騎士の私達が処分します!」  女性魔導騎士達が剣・槍・レイピアの武器に弱点属性である火・雷を付与(エンチャント)して攻撃を見舞う。  あの状態になってると落ち着くまで物理攻撃や弱点属性でも半分しか効かなかった。  仕方なしに防御結界の中に閉じ込めている。 「チッ、あの状態だとS級ランク並の強さになるから面倒くせぇんだよな。弱らせるのに何時間掛かると思ってんだよ。もう倒しても構わないだろ? オッサン!」   「だからアレは闘技場の目玉何だぞ。貴様らご主人様の女王陛下がワシにリクエストしたのに、それを貴様らが倒したら期限を損ねるぞ」  男口調の強い女性騎士が一歩も引かず、中年太りのオッサンと言い合いの喧嘩をしている。 「まぁまぁ、そう仰らずに。国民を守るのが我々、女聖騎士団(ロイヤルナイツ)の使命ですよ」  アレが女王陛下直々に選んだエリート中のエリートと言われた人達なのか。  あの女性騎士達が倒したら怒られるから出来ないならば、事を納めるに俺が倒しても問題はないだろう。  どうせ誰も聞いてないし、厨二心溢れる魔王ロールは誰しもが一度やってみたい事だと思う。  幻影魔法で禍々しい悪魔の女性に見立て、念の為に闇属性魔法で身体を覆い隠したから大丈夫だろう。  誰も聞いてないから言いたい放題やってみたかった。 「我が名はアポカリプス。この世界に終焉と破滅を齎らす魔王! 我の前に平伏さない人間がどうなるかを思い知るが良い! 終焉魔法・《アポカリプス》」   天空に闇属性魔法陣が出現して、終焉魔法のレーザーがピンポイントに狙いを定め放った瞬間。  どごぉおおおおおおん‼︎‼︎  防御結界がパリィイインと割れて街中の建物が破壊してしまった。  ゲーム世界でチート扱いされていた、時間魔法・《時間逆行(タイムリバース)》を発動し、破壊された建物が逆再生で元に戻り始める。  その場で暴れていたミノタウロスだけが、漆黒の闇に飲まれ跡形もなく消滅したままになっている。 「どうだ人間共よ! 恐れ入ったか、我に平伏せば命だけは……」 『シオン様、人前では大変恥ずかしいのでお辞めください。それと……やはりまともな友達を見つけた方がよろしいかと』 「……はい」  痛々しい子を注意するみたいな流れになって冷静さを取り戻すと、地上では二人の女性魔導士がこちらを見ている。    とりあえず魔法は上手くいって、俺は屋敷に戻った。
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