第1話 ニューゲームで異世界転生

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第1話 ニューゲームで異世界転生

 高校のお昼休み時間の屋上、いつもの行為で必死に耐えている。 「死ね、豚野郎!」 「てめぇみたい豚がいると、教室が養豚場みたいに見えんだろうがよぉ!」 「アニオタのお前は現実から逃げてるだけのゴミだろ、早く出荷されるなり、自殺するなり、死んでくれよ、生きる価値もない屑がよぉ!」 「ぐはっ、ごは……っ!」  俺……汐音(しおん)は DQN達に全裸にされた挙句、殴り・蹴りを繰り返しやられていた。  虐められているのは、体重三桁・豚みたいな顔とニキビ塗れ、アニメオタクという嫌われる典型例を集約したような容姿だからだろう。  屋上のドアが開いた音が聞こえて、DQN達は一斉に振り返る。 「おい、何やってんだ! 虐めは辞めろって言ったよな!」  聞き覚えのある声が叫びが聞こえて、DQN達は俺から対象を変えて襲い掛かるも、 「何でイケメンのお前が、こんな豚を庇ってんだよ……がはっ!」 「くそっ……! ごほっ……うぐっ!」 「くそが、覚えてろよ‼︎」  簡単にDQN達を殴り・蹴りで倒すと逃げ去ってしまった。 「大丈夫か汐音? 相変わらず酷くやられたな」 「ありがと。いつもの事だから気にするなよ。今日は金曜日だから大抵の事は我慢出来るさ。今日と土日でゲームして現実逃避できるからな」  俺の制服を離れた場所にあるのを取りに行って返してくれた、神代聖也(かみしろせいや)は手を差し伸べて、俺を立たせてくれた。  女子生徒と女性教師から人気があり、容姿端麗・スポーツ万能・成績優秀・財閥御子息。  ラブコメ漫画の主人公を体現したみたいな奴で、これで性格が悪かったら良かったが、困ってる人を助け様とする正義感まで持った奴だ。  まるでファンタジーゲームに出てくる勇者という言葉にピッタリ合うが、ファンタジーもラブコメもない世界に産まれてきたのが間違いかもしれない。 「君はゲームが好きなんだな……ってコレは何?」 「あっぶね!」  聖也の足元から中心に広がる、大きな円環型の模様が出現して、俺は慌てて中に入らない様に外側に逃げた。 「ちょっと、何が危ないんだ? 出られないんだけど!」  見た事もない文字が時計回り・反時計周りに回転していて、明らかにファンタジー世界等で見る魔法陣で、文字が徐々に発光して眩しくなる。  彼は完全に見えない壁に閉じこめらられてしまい、必死に出ようと試みるも無駄に終わる。 「おめでとう、聖也。お前は異世界に勇者として召喚されるはずだ」 「異世界って何の事!?」 「それは多分……「剣と魔法のファンタジー」異世界かもしれない。そこで勇者なったお前は、チート無双したり……なんやかんやあって……王女様、どっかの令嬢、可愛い獣人、それから美人エルフがお前のヒロインとなるからそこでハーレム築けば大丈夫だから」 「なんやかんや!? そんな適当な理由を信じられるわけないだろ! 助け……」 「頑張れよ〜」  俺が異世界に行こうモノなら、豚のモンスター・オークと勘違いされて殺されかねないし、女神からチート能力を貰ってるだろうし、心配するだけマシだな。  午後の授業はパソコン教室で行われるから、早めに入ったがまだお昼休み時間で誰もいない。  家でいつもやってる『ブレイブファンタジー』MMORPGを起動してログインする。 「昨日一周目はクリアしたし、アプデで二週目『強くてニューゲーム』と新規クエストが追加されたのか。最初だけ進めておくか」  一周目のデータを引き継いで『強くてニューゲーム』を始めると、画面が強く光り眩しくなり、俺は意識を手放した。 ♢♢♢  長時間睡眠したみたいに、全身が動かし辛い。  目を開くと視界がぼやけてるの、メガネを付けてないからか?  目が慣れて見えて来ると、生活家電が置いてない西洋風の部屋だな。 「ーーー、ーーー!」 「ーー、ーーー!」  俺を見下ろす二人の美女が、何かを言ってるが分からない。  一人の褐色美女が俺を軽々と持ち上げて抱っこするが、体重三桁もあるのに美女は見かけによらず馬鹿力なのか?  「私の可愛い可愛いシオンたん! チュッ、チュッ!」  両頬をキスされたのは嬉しいが、私の(・・)とはどういう意味だ? こんな美女を母に持った覚えはない。  壁に飾ってある鏡がチラッと見えて、可愛い女の子の赤ちゃんがいるなと思いつつ眺めていると、抱っこしてる美女が俺の視線の先に気づいてくれた。  褐色美女が俺の小さな手を振らせると、鏡に写る赤ちゃんも手を振る。 「な〜に〜? もう自分の可愛さに気づいちゃったの! この可愛い女の子(・・・)は誰かな〜? シオンたんでした〜!」 「あーあうー!?」  俺は「女の子!?」と驚いて喋ろうとしたが、まだ年齢で喋れない為に意思疎通は出来ない。 「シオンのお世話係兼護衛を貴女に任せるわよ、ドゥーム?」 「お任せください。代々闇属性を司るダークロード家に仕える、この私。闇の召喚獣・ドゥームズデイにお任せください」  美女が隣にいたメイド服の美女に言う。  その名前とこの美女の姿を見て思い出した。  闇の召喚獣・ドゥームズデイは『ブレイブファンタジー』のオンラインゲームに出て来るキャラ、令嬢と召喚獣の第一形態だった。  世界に絶望して悪となった令嬢が、闇の召喚獣と合体し、真の姿となり世界を終焉へと導くラスボス。  王女の異世界召喚によって、男主人公or女主人公を選んだプレイヤーがラスボス撃破からの王女と婚約……という流れになってる。  つまり俺はゲームの世界に転生したというのか? 「くりっとしたお目々がか〜わ〜い〜い〜♡ もうママが一生お世話するから、大きくならないでシオンたん♡ チュッ、チュッ」  俺の知ってるラスボスは両親からも虐待されていて、親の愛情を知らない子供の過去回想シーンがあった。だが、逆に愛情が重たい程の親バカを感じる。  つまり『ブレイブファンタジー』に似た異世界転生したという可能性もあるはずだけど、まだどちらとも分からない。 「奥様、レッドドラゴンを空を飛んでいますよ」  ドゥームが窓を開けると涼しい風が入って来るが、空を飛んでるドラゴンの熱で風が温まる。  ゲーム世界にもあったが、王国全体に防御魔法陣の結界があるから、モンスター侵入は滅多に破壊される事はなかった。  レッドドラゴンは防御魔法陣に触れると、雷属性魔法が発動してダメージを与えて触れる事さえ許さない。  破壊して侵入をしようとするが、王国を警備する魔導騎士団が動き始める。 「見えるかな? あれが怖いドラゴンだけど、いつか大きくなったらママみたいに……」  闇属性を司るなら魔法が使えるのかと疑問に思った。  試しに俺は、闇属性魔法を指先に超圧縮した《闇光閃(ダークレーザー)を放つと、レッドドラゴンの首をスパッと切断してしまった。  褐色美女ママは目を大きくパチパチしていて、気味悪いと嫌われて化け物と虐待ルートになるのか!?   母親に嫉妬で虐待されてるとはあったけど、まさかこれが最初のイベントじゃないだろうな!? 「なれると思ったけど、ママを超えてるじゃない!。強くて可愛い何て素晴らしいわ」  ある意味、親バカで良かったかもしれない。 「この年齢から闇属性の上級魔法を無意識下で使われたのなら、シオン様は凄い逸材ですよ奥様。私の魔法も覚えてくれるかもしれません。ですが、魔力コントロールから始めた方が良いですね」  ドゥームは俺の顔を眺めては、満面の笑みを浮かべている。 「まずはお腹一杯にならないと、何もできないよね?」  ミニスカドレスを着ている褐色美女ママは、肩紐をズラして巨乳を露出して俺の唇に当てがうと、母乳を飲ませられた。  満杯になると睡魔に勝てず、また意識を手放した。
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