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「おどかしてねえよ」下履きに履き替えたおれは、彼女に目もくれずに歩き出す。「向こうが勝手に驚いてんだから、しょうがねえだろ」
「おどかしてんだって」真奈美が早足で追いつき、おれの右に並んだ。「あんた、いつも人を見る時ギロっとにらむでしょ。それで一度ヤンキーに絡まれて大変なことになったじゃん」
「別に……にらんでるつもりはねえけどな」
いや、マジで。
「やれやれ」真奈美が肩をすくめ、ニヤニヤしながら言う。「自覚がないのも困ったもんね。まあでも、あんたも好きな女の子でもできれば、ちっとは変わってくるかもねー」
大きなお世話だ。お前に言われなくても、おれには既に好きな女がいるんだよ。
と、突然真奈美の顔がぱぁっと輝く。
「あ、お兄ちゃん!」
真奈美の視線を追うと、正門の前で、おれらより二つ上の彼女の兄、健人さんが手を振っているのが見えた。彼は高一だが、学校がおれたちの中学に近いので、今でもたまに兄妹一緒に帰っている。
「おう、雅也。久しぶり。部長頑張ってるか?」
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