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次に目を覚ましたときに聞いたのは、母の悲鳴だった。僕は、時計を見ながら『ああ、学校遅刻しちゃうな』なんてのんきに考えていた。
ランドセルを拾い、鼻血の跡を濡らしたティッシュで拭く。いつもご飯を食べている部屋を見ると、おとーさんがおかーさんを殴っていた。
「お前みたいな馬鹿マ●コが馬鹿ガキ産むから、馬鹿が馬鹿産んで馬鹿ばっかになるんだよおい! 聞いてんのか!!」
「やめて! やめて!」
「おい! 聞いてんのかって言ってんだよ! ちゃんとテメーのガキをちゃんとキョーイクしろこのドブカス売女が!! お前みたいな低学歴のゴミにならないようにな!!」
「いってきます」
僕は小声でつぶやくと、家を出た。そして明日から、朝は漢字ドリルをやろう。おとーさんが怒らないように、と思った。
「その顔、どうしたの?」
登校すると、担任のせんせーに聞かれた。
「転びました」
正直に『おとーさんに殴られました』なんて、言えるわけない。以前そう言って児童相談所の人が家に来た。そして、問題なしと判断されて、帰っていった。その夜、殺されるかと思った。なので、大人は信用していない。
「そう。気を付けてね」
とだけ言って、せんせーは僕から興味を失った。ほらね、大人は信用できない。
せんせーが出席を取る。名前を呼ばれると、元気でもないのに『はい元気です』と答えた。僕の人生は、全部ゴミみたいな茶番だ。ああ、はやく夜中にならないかな。おねーさんに会いたい。
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