深夜徘徊少年と壊れたおねーさん

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 その日僕は、深夜徘徊を試みた。それは、僕が痴呆老人だからではない。うきうきるんるんピクニックがしたかったからでもない。ただ単に、家にいたくなかったからだ。  あざだらけの体を引きずって、近所の自然公園に行った。最近(ちまた)では、誘拐殺人が流行ってるらしい。今朝も、小学生の死体が発見されたというニュースを見た。 「たのしみだな~」  僕はるんるんと、鼻歌を口ずさみながらスキップで、真っ暗な公園を駆ける。転んでも構わない。いまさら体にケガのひとつや二つ増えたところで、大して変わらない。『仲間がいるよ!』と、某海賊漫画の主人公みたいに言った。もう満員かもしれないけれど。  公園の脇道には、古びた看板が立っていた。『痴漢に注意!』と書いてあって、真ん中がベコって凹んでた。きっと、痴漢が腹を立てて蹴っ飛ばしたのだろう。看板のくぼみに足を当ててグリグリする。特に意味はないけれど。  つまらないな。静かで、誰もいない。公園を一周して、帰ろうかと思っていた矢先、歌が聞こえてきた。
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