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「ていうか、どうしたんだよ、その顔! 病院!!」
おねーさんのスウェットの裾を掴む。首を横に振る。
「いじめられてるんなら、学校行かなくていいんだぞ」
おねーさんは屈んで、目線をベンチに座ってる僕にあわせてくれる。
「おとーさんとおかーさんも、きっと許してくれるよ。アタシもさ、昔不登校のときあったんだ」
ここまでおめでたいと、もう冷笑しか出てこない。
「ははは……あはははははははははははははははははははは!!」
突然笑い出した僕を見て、おねーさんは少し引いた顔をした。
「そのおとーさんに、殴られてるんですよ」
自分でも意図していなかったほど低い声が出て、少し驚いた。
「そ、れ……は」
おねーさんが、信じられないものでも見たような顔をした。
「幸せな家庭に生まれ育ったあなたはいいですね。おとーさんに殴られたことなんて生まれてから一度もないでしょう。殴られるかもしれないなんて考えたこともないでしょう。家に入るときに、緊張してドキドキしたりしないんでしょう。寝る前に、明日は痛いことされませんようにって願うこともないんでしょうね。うらやましいです。うらやましい、うらやましい。いいなぁいいなぁいいなぁ」
頬を触る。口角が上がってる。おねーさんを見る。とても怯えた顔をしていた。とん、と両手で肩を押すと後ろに転げた。
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