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転んだおねーさんの上に、馬乗りになる。試しにこぶしを振り上げると、ビクッと体を震わせて、数秒後に頭をかばうポーズをした。
「へへへ……反応が遅いですね。おねーさん、殴られたことないでしょう?」
肩を掴んで、ぎゅっと力をこめる。
「うっ……!」
おねーさんは痛そうに、目を閉じた。
「僕は、あなたの家に生まれたかった。あなたのような幸せな家庭に。僕は、僕はね……、あなたになりたい。あなたになりたいんです。僕をあなたの家に連れて行ってください。僕をあなたの家に連れて行ってください」
「それは……無理だ」
「子供はいらないですか?お金がかかるから嫌ですか?だったら、殺してください」
おねーさんは、息をのむ。僕はニヤリと笑って
「殺してください、僕を殺してください。優しくしたんなら、最後までちゃんと責任取ってくださいよ。お願いです。おねがい、おねがいです、優しくしないでください。殺してください。最後までちゃんと……ちゃんと、ちゃんと。殺してください殺してください殺してください。お願いしますお願いしますお願いします」
おねーさんは、僕を抱きしめる。
「もう、これ以上……生きていたくありません」
温かいものが、頬をつたった。僕じゃない。おねーさんが泣いている。ぽたぽたと、落ちた涙が僕の頬を流れて、まるで僕の代わりに泣いてくれているようだった。
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