深夜徘徊少年と壊れたおねーさん

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 パチパチパチ。拍手をする。結局、おねーさんはそのあと三曲も歌った。全部の歌が、ヘタクソで音痴だった。  歌い終わったおねーさんは、おいしそうにごくごくと、ペットボトルのジュースを飲む。半分くらい余って、 「おい、ガキ。飲むか?」  と差し出される。『ありがとうございます』とちゃんとお礼を言って受け取る。恐る恐る口をつけると、おいしい! 勢いよく飲み過ぎて、少し吹き出してしまった。 「ご、ごごごごめんなさい! ごめんなさい!」 「いいんだよ。ほら、これで拭け」  おねーさんは、ハンカチを差し出してくれた。『ありがとうございます』とちゃんとお礼を言って受け取り、口の周りを拭いた。水分が入って胃袋が本来の機能を思い出したのか、おなかの音が鳴った。 「なあ、ガキ。腹減ってんなら、飯食わせてやろうか?」  それって、お家に連れて行ってくれるってことですか。つまり、それって 「誘拐ですか?」 「馬鹿ッ!」  おねーさんは明らかに狼狽(ろうばい)して、僕の頭をバシッと叩いた。 「ラーメン食わせてやるって言ってんだよ!」
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