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そうして、僕はおねーさんにラーメンを奢ってもらうことになったのでした。回想終わり。
「ごちそうさまでした」
食べ終わったので、箸を綺麗に並べて置き、両手を合わせた。ちらりと横を見ると、おねーさんも食後の杏仁豆腐を食べ終えた直後のようだった。
「じゃあ、出っか」
おねーさんはお会計を払って、出入り口ののれんをくぐった。僕もそれに続く。店を出ると、
「じゃーな。ガキはちゃんと家に帰れよ」
と言うので
「もっと一緒にいたいです」
と口説いてみる。ホントは家に帰りたくないだけだが。
おねーさんは顔を赤らめるかわりに、頭をガシガシとかいて
「あのなぁ~。アタシとお前が一緒に歩いてたら、警察沙汰だろうが」
確かに大人が小学生を連れ歩いたら、誘拐犯として捕まってしまうだろう。
「だったら、おねーさんの家に泊まらせてください」
「馬鹿ガキ! さっさと家に帰れ!」
ぐいぐいと背中を押されてしまった。僕の家の方角は、こっちではないのだが。
おねーさんに背中をぎゅーぎゅー押されながら、首だけで後ろを向く。おねーさんはむっとした顔をして、
「ちゃんと帰れよ。親が心配すんだろ。あと、今日あったことは誰にも言うなよ」
「分かりました」
『僕の親は心配なんてしません』とは言わなかった。二つのことをいっぺんに言われても、一度には一つしか答えられないのだ。吾輩、まだ齢十歳であるがゆえ。
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