深夜徘徊少年と壊れたおねーさん

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 自宅が見えた。ボロボロのアパートだ。玄関から入らずに、まずベランダを見る。カーテンの下からのぞき込む。おとーさんとおかーさんが寝ていた。  よし。家に入ろう。ドアを開ける。いつも、鍵はかかっていない。おかーさんは、鍵っていう概念を多分知らない。後ろ手にそっとドアを閉める。このときがいつも、一番緊張する。  物音を立てないように、息をひそめてゆっくり歩く。  ミッション『おとーさんとおかーさんを起こさないように寝室に行く』  スタート。心の中で、ピピーと笛が鳴る。真っ暗で、そこら中にゴミが散らばっているので、かなり難易度は高いと思う。いいぞ、もう少し。よしやった。たどり着いた!  子供部屋にはドアがない。おとーさんが壊したからだ。大家さんがすごい怒ったみたいだが、お金をたくさんあげたら許してくれたらしい。大人の世界って汚いですね。  さて、せんべい布団に寝転ぶ。体は疲れている。目を閉じて、明日は痛いことがありませんようにと願う。
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