深夜徘徊少年と壊れたおねーさん

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「ただいま」  僕はちゃんと、帰宅の挨拶をした。おとーさんは、僕を見るとチッと舌打ちをした。その一秒後、再びテレビに視線を戻した。おかーさんは、野菜炒めを作っていた。  僕はちゃんと手を洗って、食卓に着く。ちゃんと正座をして、座ってご飯を待っている。しばらくすると、おかーさんが野菜炒めをお皿に持って、ちゃぶ台の上に置いた。 「まーた野菜炒めかよ」  おとーさんは、食事のときに毎回文句を言う。 「文句あんなら、食わなきゃよくない?」 「あ゛あ゛!?」  おかーさんは馬鹿だから、反抗して、いつもおとーさんに殴られる。ドカ! とか、バキ! とか『ギャー!』とか『ごめんなさい』とかの音をBGMに聞きながら、野菜炒めと米を頬張った。 「ごちそうさまでいでっ!」  おとーさんに殴られた。たぶん、おかーさんを殴ったついでだ。おとーさんの顔を見上げる。 「へへ……へへへ」  こういうとき、僕はへらへら笑ってしまう。おとーさんは、もう一度僕を殴ったあと、舌打ちをするとテレビの前に寝転び、何事もなかったかのように野球中継を見だした。 「ふぅ……」  今日はニ発か。及第点かな。洗い物を水垢だらけのシンクに置いて、そうつぶやいた。
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