1. クズ、焦る

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 あれから家に着き、昼頃ベッドで眠った。そして夜19時、俺はまたバーに出勤していた。今日は日曜日。サービス業は土日も当たり前に仕事だ。更衣室で黒いシャツに着替え、ボタンを上までしっかり留める。 「星詩くん、おはよ〜」 「先輩おはようございます」 「今日は日曜日だし混みそうだね〜頑張ろ!」 「そうですね」  いつものように八瀬先輩と開店準備をする。さすがに朝までヤッてからだと少し寝れてもやっぱり眠い。 「そういや、昨日の酔っぱらいさん大丈夫だったかなー?ちゃんと家帰れてるといいけど」 「あー、まあ大丈夫じゃないっすかね。タクシーの運転手さんにお願いしたし」 「そうだね〜。なーんか真面目そうな子だったし、ストレス溜まっちゃって飲みすぎたのかなぁ?」  話題に出たせいで、昨日のメガネ君との一部始終を思い出してしまった。あれがストレスの反動ならやばいだろ。しょっちゅう違う男とマッチングして、飲まされて無理やり…とか有り得そう。  でも、昨日メガネ君が本気で怖がってる感じもなかったし…同意の上なら仕方ないけど。人は見かけによらないか。 「じゃあオープンしまーす」 「はーい」  そして時刻は20時。俺が店の扉を開けてオープンの看板を出した…時だった。店の前に人が立っていて「わっ」と思わず声が出てしまった。 「あっ…、びっくりさせてごめなさい…」  そこにいたのは、まさしく。さっきまで話題になっていた人物。昨日の酔わされメガネ君だった。 「え、あ。いや…、こんばんは」 「こんばんは、お店って…やってますか?」 「あ、今オープンしたとこです。どうぞ」 「ありがとうございます…」  相変わらずのメガネをかけているが、昨日のスタイリッシュなモードっぽい格好と違い、今日はカジュアルな服装だ。一瞬分からなかった。 「いらっしゃいませ〜」 一一…昨日来たばっかなのに、翌日一番乗りでまた店来るなんてどうしたんだ?また男と会うためか?でも、いるってことは昨日は何とか帰れたんだな。  席へ案内して俺がカウンター内へ入ると、メガネ君は「あっあの」と声を絞り出した。 「はい?ご注文お決まりで…」 「昨日はすみませんでした!!」 「えっ…」 「ぼ、僕酔っ払ってしまって…ここで飲んでたことは覚えてるんですけど、気付いたら家の玄関で寝てて…!それで帰るまでのことが思い出せなくて、お店に迷惑をかけたんじゃないかと…!」
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