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「いらっしゃいませ、何名様で…」
「あー2人」
「かしこまりました。奥のカウンターへどうぞ」
まあ、扱いが上手くなったところでクズっぷりに磨きがかかるだけだけど。でも、そのおかげで波風立てず関係が持てるんだからいいことしかない。
「ご注文はお決まりですか?」
「あー俺はマンハッタン。こいつにはギムレットで」
「かしこまりました」
見たことない顔の男性2人が端のカウンターに座った。新規のお客様だろう。注文をしてきた男性は髭を生やした30代後半っぽい風貌。隣にいるもう1人は大人しそうなメガネで黒髪、歳は俺と同じくらいに見える。
ただ、申し訳ないが注文をしてきた男性はあまり品がいいとは言えなさそうだ。入店してからの態度もそうだが、おもむろにポケットからタバコを取り出して「灰皿」と俺に言ってきた。
うちは店内禁煙で、店の外に灰皿が設置されているからそこで吸ってもらうしかない。そう伝えると、「は?あー」と面倒くさそうに返事もせず鼻で薄ら笑った。
一一一……なんだこいつ。
まあ仕方ない。来るのは品のあるお客様ばかりとは限らない。特にこういう夜の店は。理不尽なことを言う客や、厄介な客もいる。いつも通り気にせず対応するけど、周りに迷惑が掛からないように念の為に目は光らせておこう。
「な?美味いだろ」
「は、はい…!飲みやすくて美味しいです!お店もアンティークで素敵だし…」
「だろ。どんどん飲めよ。俺の奢り」
「あっ、ありがとうございます!」
それにしても、あの客と飲んでる連れは全くタイプが違って見えるけど何繋がりだろう。メガネの男は真面目そうだし、童顔寄りで言葉遣いも丁寧だ。
____それに、さっきから髭の男にベタベタ体触られてるけど大丈夫か?まあ嫌がってる感じもないから恋人なのかも。そこまで気にすることじゃないか…。
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